普段、私は認知症をメインに診ている医師とお話をすることがあり、認知症薬についてまとめてみたいと思いました。
前回の続きで、リバスチグミンパッチ(リバスタッチパッチ®、イクセロンパッチ®)について解説してみます。
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もくじ
規定通りの用量にはいかない
これは以前ドネペジルについてもアップした内容と共通するのですが、認知症薬は全般的に低用量で使用されることが多いです。
リバスチグミンの用量は、
「4.5mg➜(4週後)9mg➜(4週後)13.5mg➜(4週後)18mg」と用量を上げていくことになっています。
また、「1日18mg未満は有効用量ではなく、漸増又は一時的な減量を目的とした用量であるので、維持量である18mgまで増量すること。」とも明記されています。
ドネペジルと似たような感じだね
実際は
実際のところ、「上記のように順当に用量を上げていくケースはまずない」、と専門医から聞きます。
4.5~9mgで効果が出ることが多く、せいぜい13.5mgまでの増量とのことで。
もちろん18mgまで上げて、効果と副作用のバランスが問題なければ否定されるものではないでしょうが。
「1日18mg未満は有効用量ではなく」という箇所がひかかりますね
順当な用量upは副作用に注意
規定通り用量を上げていかない理由は、18mg未満でも効果が現れるのと、副作用が生じるからです。
副作用としては、「興奮性」、「錐体外路症状(パーキンソニズム)」、「消化器症状(悪心・嘔気など)」、「徐脈」とドネペジルとほぼ同じです。
特に、DLBに対してリバスチグミンが使用されることが多いため、錐体外路症状(パーキンソニズム)は要注意です。
4.5mg以下の用量も効果あり
4.5mg以下でも使用されることがあります。
中でもDLBは低用量で反応するのと、副作用のバランスがあるため、ADより低用量で使用されることがあります。
(『リバスチグミンパッチは【貼るドネペジル】じゃない①』の「DLBにも使用」に詳細あります)
皮膚症状に注意
リバスチグミンパッチの全身症状(消化器症状など)以外の副作用としては、皮膚症状に注意が必要です。
テープ剤ならでは
皮膚症状は《テープ剤ならでは》ということもありますが、リバスチグミンパッチは他のテープ剤に比べ、貼付部位の「かゆみ、紅斑」というのが比較的多くある印象です。
保湿クリームで対応
対策としてはヒルドイドクリーム/軟膏®などの保湿剤を処方するケースがあります。
ヒルドイドなどの医療用医薬品に限らず、市販の保湿剤でも構わないです。
具体的な方法として、
- 翌日のパッチを貼る場所に、予め(前日)ヒルドイドなどの保湿剤を塗っておく。
- 毎日パッチを貼る場所を変える。
皮膚トラブルで離脱しないように、これを継続していくのが大切です。
ちなみに添付文書には、「貼付する箇所にクリーム、ローション又はパウダーを塗布しないこと。」と記載されていますが、上記のような保湿剤を使用してさほど問題になっていないのが実情です。
保湿剤を塗ることで剥がれやすくなるかもしれないけど、《かゆみ対策》を優先で。
かゆくてドロップアウトするより、継続する方が良いということです。
基材変更でかゆみ抑制
皮膚症状を改善するために、2019年に新規基材として製剤が改良されました。
➜『テープ基材の変更』について
製剤改良後の印象としては、
劇的に皮膚トラブルは改善はされてないかな・・・
というのが正直な印象です。
ですが、少しでも皮膚症状が減っていることは企業努力の結果だと思いますし、
製剤変更において基材変更は珍しいことです。
製品改良はコストがかかるしね
ちなみに薬価は製剤改良前後で同じなので、患者さん負担は変わらないです。
貼るドネペジルではない
元々はリバスチグミンは内服製剤として先駆けていたことと、作用・特性を考えると、改めて【飲めない患者さん用だけではない】ことを理解できると思います。
つまり、テープ剤だけど、先駆け認知症薬の「ドネペジル」のテープ剤のイメージではないことを言いたかったのです。
日本には《リバスチグミンがテープしかなかった》とでも言うでしょうか。
テープ=飲めない時用ではないと
実際、飲めない(食事ができない)状態になった患者さんに対し、認知症薬を投与する意義を考えると、改善が期待できる・できないに分ける必要があります。
それらを踏まえると、やはり【テープ=飲めない時用】ではないかと思います。
ADL低下が過度に進行すると、薬で回復は難しいイメージでしょうか・・
(※ADL・・・日常生活動作。食事、歩行、排泄、着替えなどの動作のこと。)
前回に渡ってリバスチグミンの特性をアップしてきました。
リバスチグミンはテープ剤だけど、いろいろ期待できる側面をもった薬剤ですね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。