普段、私は認知症をメインに診ている医師とお話をすることがあり、認知症薬についてまとめてみたいと思いました。
今回はリバスチグミンパッチ(リバスタッチパッチ®、イクセロンパッチ®)について解説してみます。
リバスチグミンパッチは2社の製薬会社から発売されていて、2製品あります。
両者の用法・効能は同じです。
薬価はイクセロンが1枚あたり数円高いですが、自己負担的に大きく変わらないです。
医師の好みで使用が分かれます
もくじ
【貼る】認知症薬
パッチ剤として登場
2011年にリバスチグミンは初めてパッチ剤(貼付剤)の認知症薬として国内で販売され、2020年7月現在においても唯一の貼付剤の認知症薬として位置付けしています。
貼付剤は食事や内服など嚥下が難しい患者さんにも使用できるというメリットがあります。
また内服だと飲み忘れや、飲んだか飲んでないかわからなくなることが時々ありますが、テープ剤は体に貼っていれば投与している確認ができます。
日付を書いておくと、尚確認できるよ
前日のテープが貼りっぱなしの時もあるかもしれないからね
貼付剤=《飲めない患者さん用》ではない
貼付剤の中には【主に嚥下困難時用】の使用目的(売り文句)として開発された製剤もあります。
ではリバスチングミンパッチは【嚥下困難/薬が飲めない患者さん用】かというと、そういうわけではありません。
(嚥下困難がみられる方に使うこともありますが)
他の認知症薬にはない効果が期待できます。
後で詳しい解説があります
飲むリバスチグミンもある
国内ではパッチ剤としてだけ市場に出ていますが、海外ではカプセル剤も発売されています。
カプセル剤が国内で承認されていないのは、内服では嘔気などの消化器症状の副作用が強いため、これらを軽減するために貼付剤として開発・承認されました。
そうだったんだ
他の認知症薬には無い作用
認知症薬の多くは、脳内ACh(アセチルコリン)を増加させて、脳内コリン作動性神経系を賦活します。
リバスチグミンやドネペジルはAChE(アセチルコリンエステラ-ゼ)阻害作用により、AChを増加させます。
そしてリバスチグミンはもう一つのChEも阻害します。
もう一つのChE阻害作用
AChの分解にはAChE(アセチルコリンエステラーゼ)とBuChE(ブチリルコリンエステラーゼ)の酵素が関わっています。
リバスチグミンはBuChEも阻害するという他の認知症薬にはない特徴があり、より強力にAChを増加させます。
だから内服にすると副作用も強く出るんだね
(下図でイクセロン(リバスチグミン)はAChEとBuChEのダブルブロック)
食欲増進作用
その他リバスチグミンのBuChE阻害作用には、グレリン分解抑制作用があります。
グレリンは食欲増進作用があるホルモンです。
リバスチグミン➜グレリン分解抑制➜グレリン増加➜食欲増進
認知症の人は脳内グレリンが低下している傾向にあるみたい
どういうタイプに使われる?
気力を上げる
認知症の症状の中で、
無気力、言葉数が少ない、嚥下障害や拒薬がある、食欲低下がみられる、DLB
他の認知症薬で消化器症状などの副作用が出た(出そう)場合
これらの症状がある患者さんに使用されるケースが多いです。
《ドネペジルよりもっと活力を出したいイメージ》かな・・・
ドネペジルの量を増やすと興奮性などの副作用も伴うので、そのあたりのバランスが必要になります。
使用量は増えている
最近では認知症治療薬の中でも、ドネペジルと同じくらいリバスチグミンがよく使われます。
DLBに対しても使用されており(後述)、使用量は伸びている印象です。
費用面ではリバスチグミン以外の認知症薬にはジェネリックが存在するため、他薬より自己負担額が大きくなります。(2020年7月時点)
また、他の認知症薬と同様に病態進行抑制には効果はないです。
適応外使用として
リバスチグミンの適応としてはAD(アルツハイマー型認知症)だけですが、それ以外にも使用されることがあります。
☆
DLBにも使用
DLB(レビー小体型認知症)はドネペジルにしか適応はない(2020年7月時点)のですが、実際はリバスチグミンも使用されるケースがあります。
DLBには《ドネペジルより使われているんじゃないかな》って思うくらい
通常ADの用量は4.5~18mgで使用されます。
DLBの場合、ADに比べて低用量で使用します。
多くの例で2.25~4.5mgが適正量になりますが、せいぜい多くても9mgまででしょうか。
(2.25mgの場合は製剤がないので、4.5mg製剤を半分に切って使用します。)
DLBは病態がパーキンソン病に似ていることから、AChの増加が悪化を引き起こすことがあるため、低用量でコントロールします。
AChが増えると、DOPA(ドパミン)の量が減りパーキンソン病が悪化します。
AChとDOPAは互いにバランスをとってます
2020年7月時点ではリバスチグミンはDLBに対しては適応外使用となりますが、臨床での使用例が多く「数年後には適応が通るのでは?」と思っています。
こういう例は今まで他の薬でもあったよ
認知症のせん妄にも応用
せん妄とは意識レベルが低下して、妄想、幻覚、不穏、興奮などの症状が出る病態のことを言います。
認知症のBPSDの一つにあります。
せん妄を伴う認知症にもリバスチグミンは有効とされ、使用されるケースがあります。
その理由として、リバスチグミンは他にはない強力なACh賦活作用➜意識レベルを上げる作用が期待されています。
認知症の認知機能の回復は難しく、悪化抑制を保っていくことが多くの治療になることに対し、
一方で、せん妄は患者さんとの関わり(介護)+薬によって改善していくことが期待できます。
リバスチグミンは補助的で、介護の力は大きいよね。
と、長くなってきまいたので、今回はこの辺で。
まだリバスチグミンについて書き足りないことがあるので、次回にアップします。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。