薬によって内服、外用、注射と剤形があり、内服でも錠剤、カプセル、散剤・・・・と細分化され、全部で10種類近くあります。
細かい剤形分類はともかく、薬剤師として「この病態に使う薬は?・・」と考えるときに、注射・内服(錠、散)・外用を把握しておくと、治療の選択を提言しやすくなります。
また、他の医療従事者から問われることも多々あります。
剤形をいろいろ知っていると現場で活かせるよ!
今回は医療関係者だけではなく、一般の方にも参考になる事例もあると思います。
剤形変更例を挙げてみましたので、参考にしたい方はぜひ読んでみてください。
もくじ
注射➜内服への変更
患者さんの状態によって、注射剤から内服、外用など他剤形に変更することは特に入院患者さんにはよくあります。
【各薬にある剤形】を知っていると選択肢が広がるね
医師からの変更オーダーがメインですが、患者さんの状態を観察して薬剤師から提案することもあります。
同成分薬、同種同効薬への変更
例:入院中、絶食下でA注射で治療していた。食事も摂れるように回復してきたので注射をそろそろ止め頃かな。
➜A注射には錠剤もあるので、A錠剤へ変更!もしA錠剤がなければ同効薬のB錠剤で。
入院中、急性期の状態が改善されると内服へ移行していき、退院に向けて注射を無くしていきます。
同成分に他剤形がない場合、同種同効薬や類似薬といって《同じ効果を有した薬剤が複数ある》場合があります。
類似薬があれば剤形の選択肢が増えることがあるよ
実際は同種同効薬がある薬が多いですが、中にはその疾患に有効な薬が1剤しかない場合もあります。
例:外来通院時にC注射で治療していましたが、状態が改善されてきた。C薬は注射しかないけど、同効薬のD薬なら内服がある。
➜患者負担(薬代、注射のストレス)などを考えて、D薬に変更!
ちなみに〈注射では月1回の通院が必要だが、内服にすると3か月に1回の通院で済む〉というような通院負担軽減になることもあります。
多くの注射剤は自己注できないからね
経管投与で内服を使う
注射剤を長く使っていくと、血管からの感染や薬剤コストの問題が出てきます。
また、使用したい薬が内服しかない場合もあります。
パーキンソン病など精神系の薬は内服の種類の方が注射より多いです。
例:嚥下が難しいのでNG(鼻➜胃をつなぐ)チューブから内服の経管投与をする。
飲めない場合でも、錠剤などをぬるま湯に溶解して経管から投与します。
溶けにくい薬は粉砕して
粉砕が大変だったりすると、液剤や散剤が便利なので、この時も剤形を知っていると変更提案できます。
NGチューブは一時的で経口摂取できそうになれば外します。薬の他に栄養剤の投与も可能です。
消化管からの栄養摂取は生命維持に重要だね
また長期的に嚥下回復が見込めない場合は、胃瘻といって体外➜胃にチューブが施され、そこから栄養と薬が投与されます。
点滴からの栄養と比べると、栄養素、感染リスク、生命機能維持の観点から経腸栄養の方が優れています。
自己注射できない
インスリンは自己注射の中でも有名で、糖尿病で使われている薬です。
インスリンの投与管理(手技)が患者自身、家族、施設など関わる人たちができなくなった場合、内服に変更します。
内服の血糖降下剤で不十分だったのでインスリンを使用している背景があることから、内服に移行すると血糖状態は悪くなりますが、やむを得ません。
インスリン以外の自己注射でも上記のように投与が難しければ、他剤形に変更することもあるでしょう。
他剤形もなくて、注射もできなければ投与自体が終了することもあるかな。。
内服同士の剤形変更
飲みやすい剤形への変更
飲みやすい剤形への変更提案はよくあります。
このあたりは薬剤師の方が提案することが多い印象です。
例:漢方薬の五苓散が飲みにくい、錠剤なら飲めそう。
➜クラシエ五苓散エキス錠を提案!
一般的に漢方薬は簡易的なエキス製剤(散剤)が主流ですが、一部のメーカーでは錠剤もあります。
飲む錠数が多いけどね
このように同効薬で剤形が存在すれば、カプセル、錠剤、散剤、液剤から患者さんの希望に応じて提案できます。
粉砕時の剤形変更
嚥下困難な患者さんや経管投与の場合、錠剤を必要に応じて粉砕して調剤します。
錠剤は飲めないけど、つぶして粉状にしてトロミとかつければ飲めることがあります。
粉砕指示があった場合、散剤や液剤の剤形がある薬であれば、剤形変更依頼をします。
変更依頼は必須ではないのですが、粉砕はそれなりに時間と労力がかかりますので。
在庫の保有の問題があるので、処方通り粉砕するか剤形を変えるかは応需した薬局次第でしょうか。
内服(注射)➜外用への変更
嚥下困難の場合
飲めない患者さんの場合、テープ剤を使用することがあります。
例:嚥下困難で内服ができない、同効薬のテープに変更する。
テープ剤は皮膚に貼るだけで効果が出るので、【全患者さんが使用できる】という特徴があります。
ただ、テープ剤は使える疾患が少ないので、使える病態が限られますが嚥下困難患者さんの選択肢に挙がります。
ちなみにテープ剤は〈嚥下困難時用〉というわけではないです。
服用できる場合でもテープを使うこともあるよ
副作用を少なくする場合
外用剤の中でも局所作用といって全身への影響が少なく、副作用のリスクが少ない薬剤もあります。
このあたりは疾患状況に関わるため、医師の判断が絶対なので、薬剤師から提案することはあまりないです。
例:喘息状態が落ち着いてきたので、内服ステロイド終了➜吸入だけにする。
(基本的に、初期段階からステロイド吸入が投与されます)
吸入薬は気管支に直接到達するため、全身への影響は少ないです。
また、皮膚疾患に使用されるステロイド軟膏類の副作用は、全身投与(内服、注射)に比べかなりリスクが少ないです。
短期的に使用する分には、ほぼ心配する必要がないくらいです
外用同士の剤形変更
軟膏、クリームなどの変更
皮膚疾患や鎮痛剤に使用される外用薬としては、軟膏、クリーム、ローション、湿布(テープ)が主です。
これらは同じ薬の場合、効能上の違いというより病状部位の状態や使用感で剤形が考慮されます。
特に使用感においては患者さんがダイレクトに感じるので、要望に応えるよう処方変更に関わるケースが時々あります。
吸入デバイスの変更
喘息や閉塞性肺疾患では呼吸状態を改善するため吸入薬が使用されます。
この吸入薬のデバイスは大きく3つに分かれます。
- 勢いよく出るガスにタイミング合わせて吸う(pMDI)
- 微細な粉を自分のタイミングで吸い込む(DPI)
- ゆっくり出るミスト状を一定時間吸い続ける(SMI)
もし処方された吸入デバイスがうまく使用できない場合、どのタイプが使えるか患者さんに聞き取り、そのデバイスに応じた薬剤を選択・提案します。
吸入薬は《薬とデバイスの組み合わせ》が複数あるんだ
注射➜投与方法の変更
ルートが取れない場合、中心静脈からの投与以外にも、《投与方法を変更すること》があります。
例:通常は静注使用だけど、ルートが取れないので(持続)皮下注で投与する。
皮下注の場合、直接血管に針が刺せなくても、皮下から注射剤を投与することで血管に薬が移行して、静注とほぼ同様の効果が期待できます。
効果発現時間が異なるなど全く同じではないけど、効果的に期待はできます。
点滴ルートがとれなくなってきて、経管投与もできない(希望しない)ケースにおいては、皮下注という投与法で使うことがあります。
持続皮下注の場合、適応外使用のケースが多く、静脈投与に比べ局所浮腫などのデメリットはありますが、逆にルート感染が起きにくいといったメリットもあります。
持続皮下注は様々な医療機関で使用されていることから実績があります。
特に終末期の緩和ケアに使用されることがあります。
終末期では持続する痛みや苦痛を緩和するため、持続的に薬の投与が必要なんだね
まとめると
長くなってしまいましたが、いろいろ剤形にまつわる具体例を挙げてみました。
まとめてみると、
個々の患者さんに適した剤形を選択する。そのためにいろいろな薬の剤形を知っていると、より適切に薬が使用しやすくなる。
といったところでしょうか。
もし皆さんの身近な医療のお役になれれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。