前回のアルコールと薬の飲み合わせ~自分なら・・その1~の続きです。
前回は【アルコールと薬の飲み合わせ】について、自分なら気にしないケースをレビューしましたが、実際は飲み合わせの問題以外に治療への影響を考慮することがありますので、それについて補足します。
また、前回は常用薬(毎日飲む薬)がない設定でしたが、今回は常用薬があった場合についても考えてみました。
それではいきましょう。
とその前に、前回の内容をご参考までに。
もくじ
治療への影響を考える
アルコールと薬の飲み合わせについて、それぞれの相互作用を考えることはもちろんのことです。
ですが、
アルコール摂取において、治療に影響しないかということも意識します。
以下に例を挙げてみます。
風邪の時、抗生剤や咳止めが処方されたケース
風邪の時の処方薬として、咳止め、解熱剤、鼻水(抗アレルギー)薬、抗生剤など状態に応じて処方されます。だいたい7日前後の投薬期間でしょうか。
風邪の初期のころは当然具合が悪いので、お酒を飲みたいとは思わないでしょう。ましてや熱があればなおさら。
ですが、3日くらい経って症状が改善していくと、「そろそろお酒を飲みたいな」と思うことは相応にあると思われます。
この《改善経過と服用期間》が重なると、「お酒を飲もうかな・・?」と迷いますね。
この場合、私はアルコールと薬云々より、アルコール摂取により完治が遅くなるので、完治を1日でも早くしたければアルコールは控えます。
また、症状が軽ければ、薬を飲んでいてもアルコールの誘惑に負ける時もあります。
アルコールが風邪の治療に影響する理由としては、
- アルコールを代謝する時にエネルギーを消費する。
- アルコールは身体を冷やす。
このようにアルコールによってエネルギーを消費したり、体温が変動することで、風邪の治療に十分エネルギーが使われないと治療遅延する可能性があります。
アルコールは血行促進で体温が一時的に上昇しますが、その後代謝により体温が低下して眠気を誘います。
特に冷えたビールは身体を冷やすので
風邪は最終的には人間の免疫力による治癒なので、栄養、睡眠、保温が治療の原則で、薬は対症療法です。(抗生剤は云々ありますが、ここでは長くなるので割愛します。)
なので、このあたりを考慮してアルコールを摂取するか判断します。
もちろん通常より量は控えますが。
飲まないに越したことはないんだけどね
ストレス性胃炎で胃薬(PPIなど)が処方されたケース
アルコールは胃を荒らします。
この場合なら胃の状態がよくなるまでアルコールを控えます。
ちなみにNSAIDsの副作用予防で胃薬を飲む場合は気にしません。
NSAIDsの単発服用では私は意障害が気にならないので。
でも気になる人もいると聞くので、そういう場合は控えた方がいいでしょう。
足を捻挫して痛み止め(NSAIDs)が処方されたケース
NSAIDs云々については先ほどの繰り返しになるのでここでは割愛します。
外傷時の痛みは時間の経過で症状が軽くなるのを待つしかないです。
なので、お酒を飲んでその痛みの回復が遅くなるとは考えにくいです。
ただ、急性期など程度が強ければ、アルコールで血流がよくなって、炎症の度合いが上がるかもしれませんので、その場合は控えます。
ある程度症状が軽くなったら痛み止めを飲んでいても、お酒を飲みたくなったら飲んじゃうかもしれません。
常用薬を服用していたら
これまで常用薬(毎日服用する薬)がない状況ということで書いてきましたが、もし常用薬があった場合を考えてみます。
常用薬があれば、お酒をたまに飲みたいと思ってみても、痛み止めなど一時的に飲む薬(臨時薬)と違って、「1回分止めよう」ってことはできないのが前提にあります。
飲み忘れて「1回分休薬する」ことはあり得るけど
飲み忘れのように【結果的に1回分休薬してしまう】ことはあり得ますが、お酒のために敢えて休薬するのはいろいろ悩ましいものです。
ただ、常用薬が必要なった場合、それと同時に〈お酒を断つ〉ことは現実厳しいと思いますので、その辺りを自分ならどう判断するか考えてみました。
影響しにくい薬であればアルコールによる相互作用のリスクは低いけど、影響する薬に該当したら禁酒するのか?(基本禁酒ですが)
ストレスたまるのも嫌だしね
ここでは以前の内容《アルコールと薬の飲み合わせ~②何がダメ?~》で、アルコールに影響する薬の中で常用薬に該当するものとして、比較的対象が多い薬を挙げてみます。
- 睡眠剤、てんかん、精神病など中枢系薬剤
- 血圧、利尿剤など循環器系薬剤
- 糖尿病薬
1.睡眠剤、てんかん、精神病など中枢系薬剤
アルコールで鎮静(睡眠)効果が強くなります。
ですが、アルコールの代謝は個人差があるため、お酒を飲んで薬を飲んでも鎮静作用に変化がない場合もあります。
これは先ほどの段落で書いたように、《治療への影響を考える》ことになるかなと思います。
鎮静延長だけならお酒を気にしないかもしれませんが、てんかん薬の効果が不十分になり痙攣を誘発してしまうとか、精神系の病態が「酔い」によって変動しないかなど考えます。
足腰が弱って転倒リスクがあれば鎮静延長も侮れないです。
そのあたりの変動症状はお酒を飲んでみないとわからないので、現状では何とも言えないとなってしまいます。
なので、この分野においてはお酒を飲んだとしても量をセーブするでしょう。
2.血圧、利尿剤など循環器系薬剤
アルコールによって血圧が変動したり、利尿作用が強くなって循環器系や泌尿器系に影響を及ぼします。
血圧は日内変動があるので、一時的にお酒で血圧上昇(低下)しても翌朝には普段の数値に戻ることが想定されます。
この変動が許容範囲なら大丈夫?
どのくらい変動するか、これまたお酒を飲んでみないとわかりません。
また、アルコールを連用するとこの《普段値》が変わってくるので、要注意ですね。
もちろん量も意識して。 なので、この分野においてもお酒を飲んだとしても量をセーブするでしょう。
3.糖尿病薬
アルコールは糖新生抑制に働き、血糖上昇を抑制して血糖低下作用があります。
血糖が低めになるなら、いいっか
ってことにはならないですよね。。。
そもそもお酒を飲むと食事量も増え、結果的に血糖上昇になる可能性が高いです。
もちろん低血糖のリスクもありますが。
なのでお酒によって血糖コントロールが変動することはあります。
この場合は、飲んだとしても量もかなり節制しないといけないかなと思われます。
少量のアルコールなら・・・
アルコールと薬の相互作用において、当然《アルコール摂取量》が関係してきます。
摂取量が多ければ薬(治療)への影響も大きいし、少なければ影響も小さい。
ただし、個人の代謝能力の差もあるので、同じ量で誰かと比較はできませんが、少なくとも自分の中の「多い/少ない」があるはずです。
アルコールに影響する薬(特に常用薬)がある場合や、治療への影響を考慮した場合など、どうしてもアルコールを摂取する場合は【量を控える】というのが鉄則になります。
「飲まない」のが鉄則ですが
今回と前回でいろいろ状況を考えてみましたが、薬を服用期間に共通して言えることは、
お酒を飲みたくなったら量を控えめにw
自分のアルコールに耐えられる量というのは、自分でしかわかりません。
その中で薬との影響を受ける、またはどう影響するかわからない状況下においては、禁酒できない場合は少なくとも量を控えることは言えます。
あとはその後の反応は個々で感じることになるかなと。
実際、こういう患者んさんもいると思われるし、このような相談を受けても私は「良いとも悪いとも言えない」のがホンネです。
治療と長く向き合っていく中で、適度に息抜きも必要でしょうし、アルコールで結果的に何も影響されないこともあり得ますので。
例:アルコールの代謝がすごくよく、摂取量が通常より少量の場合など。
ただ、「アルコール摂取して問題なかった」と結果的に捉えるのと、「アルコール摂取にそこまで気にしない(問題ない)」と事前に説明することは別解釈になるので、そのあたりをうまく伝えられるかと日々思っております。
前回に続き長きに渡りましたが、薬の服用期間中はアルコールを避けることが前提ですが、「お酒を飲みたい」と思った時の私の見解をまとめてみました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。