現在私は病院で勤務しています。以前は調剤薬局で勤務していたこともあります。
前回に続き、医療現場の側面に興味がある方や、病院で勤務してみたいと思う薬剤師さんに参考になればいいと思い、一般的に行われている院内の薬剤師業務の内容をご紹介します。
そろそろシリーズ最終間近です。
今回は《院外薬局との関わり編》ということで、外来処方を担当している【院外薬局と院内薬局の関わり】について挙げてみます。
それではいきましょう。
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もくじ
院外薬局と医療機関の関係
院外薬局は病院やクリニックなどの医療機関とは基本的に別の事業者となるため、直接的な収支の関係はないです。
つまり、別会社です。
例外的に医療機関と院外薬局が一体的な経営を行っている機関がありますが、ほとんどの医療機関と院外薬局は別会社になります。
医薬分業ってやつだね
時々入院患者さんで、「隣の〇〇薬局さんの人かい?」と聞いてくる患者さんもいるので、外から見ると区別がつきにくいこともあります。
院内より院外の薬剤師の方が患者さんと関わりが長いからね
疑義照会対応
院外処方箋において院外薬局からの疑義照会の対応(電話またはFAX)があります。
院内の薬剤師が直接医師に掛け合うこともあれば、医事課の事務職員や看護師が医師に伝達することもあり、医療機関によって対応の仕方が異なります。
医師の診療の合間を伺うから、問合せにすぐに返答ができないことがあるね。
中には〈院外薬局➞医師〉に直接つないで問合せする所もあります。
院外薬局の薬剤師さんは「医師とお話しするのはちょっと苦手・・・」と言う方も中にいますが、直接話ができた方がニュアンスが伝わりやすいので、他職員を経由するより説明しやすいです。
医師と直接話したくても、できない所もあるけど・・
先生に是非伝えたいことがあれば、「〇〇先生に直接確認したいのですが?」と一度チャレンジしてもいいかと個人的には思いますが。
(そのあたりは医療機関との関係もあるので、院外薬局の管理者に確認した上でですかね。)
新規採用薬など情報共有
院外処方で新規採用薬や採用終了薬がある場合、事前に連絡することがあります。
普段処方していない薬を突然処方すると、当然院外薬局も在庫していないので、患者さんを待たせることになります。
なので、院外にも情報共有しておくとスムーズに薬をお渡しできます。
院外薬局向けに定期的に新規採用薬をお知らせする医療機関もあるよ
基幹病院では周辺の院外薬局に文書で公表したり、クリニックでは門前の薬局に連絡することがあります。
私の経験的に、クリニックの方が病院より情報共有されている印象があります。
一般的には先の理由から情報共有することが望ましいのですが、院外処方に対して採用薬を明確に決めていない施設では、情報共有されないこともあります。
院外採用に関与するのって、実は結構大変・・
院内採用薬は在庫問題など直接自設の経費に関わりますが、院外薬局は別会社なので「そこそこ自由に処方できる」環境になってしまうことはあります。
医師が「新しい薬を使いたい」という気持ちを尊重すると、院外まで薬剤師が制限するのはなかなか難しいのが正直なところです。
使う側なら「いろいろ使ってみたい」とみんな思うよね
とは言え、院内薬局も院外薬局の在庫問題はわかるので、高額薬品など管理が大変な薬に関してはある程度院外についても関与しようという医療機関はあるでしょう。
薬薬連携への介入
薬薬連携とは【院内薬局と院外薬局の連携】のことを言います。
この5年くらいでこのワードがよく出てきました。
院外薬局では入院していた患者さんの情報や、治療している内容が全てわからないので、それらを〈院内薬局➜院外薬局に情報伝達する〉と退院後の薬物治療がよりスムーズに受け入れられることが考えられます。
私がこれまで手掛けた薬薬連携としては、
- 院内で使用する抗がん剤レジメンの内容伝達
- 個々の患者さんの抗がん剤レジメンの伝達
- 入院中変更になった薬などで、退院後も経過確認してほしい旨の伝達
- 外来患者の処方変更案などへの仲介
2、3に関しては患者さんの了解を取り、お薬手帳を媒介して院外薬局に情報伝達していました。
中でも抗がん剤の連携に関しては多数の医療機関で取り組みが見られます。
院外薬局では院内で使用された薬剤に関して情報がないため、特に注射剤が多い抗がん剤は院内でしか使用できないものがあります。
そして、その薬剤に対する副作用ケアや支持療法の処方など院外薬局でも把握・対応できるように、情報共有が必要と考える薬剤師が多くなっていることが背景にあります。
私が取り組んでいた2015年頃は、まだこれらが診療報酬になっていなかったため、医療機関側への対価はなかったのですが、2020年の診療報酬改定では算定要件に入っています。
算定要件に入ると、さらに取り組んでいく医療機関が多くなるため、ますます薬薬連携が加速していきます。
算定が認められるということは、他の医療従事者にも理解を得やすい!
薬薬連携を始めるなら
薬薬連携では先の内容以外にも取り組んでいる業務はあると思います。
初めて連携を行うことになった場合、何から始めようか迷うかもしれませんが、まずは【処方変更案】から始めるのがいいかと思います。
【処方変更案】といっても疑義照会の対応ではなく、以下のような複雑な場合などです。
院外薬局から「Aさんの処方の〇〇薬は飲みにくい(使いにくい)から、▢▢のようなご家族の背景もあると、△△薬の方がいいのではないか?」という感じのやりとりを院内薬剤師が仲介するイメージです。
一見、疑義照会のようにその場で電話問合せして解決できることもありますが、前述したように院外薬局から直接医師にメッセージが届かなかったり、説明が複雑になるとうまく伝えきれないこともあります。
そして、その処方内容によほどの不利益が生じない場合、処方通り調剤されるケースは相応にあります。
ですが薬剤師として「本当は変更した方がいいのでは・・」と思いながら了承を得られず変更できずにモドカシイ時もあります。
こういう時に院内の薬剤師がうまく医師に伝達できれば、その意向を組むこともできる可能性はあります。
普段の医師とのコミュニケーションがあってこそ
医師も多忙業務中での問合せや、電話という目に見えない相手に対してのやりとりでは、相手の意見をキチンと聞けない環境の時もあります。
疑義照会はその調剤時に確認が必要なため、電話ですぐに確認が必要ですが、緊急性(後日でもいい)のない問合わせや処方変更案に関しては、〈院内の薬剤師が医師の業務状況をみて確認することも薬薬連携になるのでは〉と思います。
院内薬剤師が医師に会って伝えたり、カルテに記入することで医師へ伝えることもできるよ
ここで院内薬剤師が関われる理由として、【後日でもいい】【次回の処方からでもいい】という緊急性がない対応の場合、動けることは可能だと思います。
疑義照会のように「その時に確認」となると時間的余裕がなく、その仲介をできないことが想定されます。
医師にとっても余裕がないタイミングで問合せするより、タイミングを改めた方がいいこともあるでしょう。
なので《即刻の疑義照会》と《後刻の処方変更など》に対応を分けるのもありだと思います。
「即刻」は関与できないけど、「後刻」なら関われる院内薬局は相応にあると思います。
まずはこういう連携もできるように、院外と院内の薬剤師がメールで連絡を取り合うなどして関係作りを始めるのがいいかと思います。
以上で院外薬局との関わり編です。
この他にもいろいろな関わり合いをしている医療機関もあると思います。
結局は各々の関係づくりによって連携業務が発展することもあれば、しないこともあるということでしょうか。
やはり互いに分かり合って医療を提供できる関係が望ましいですよね。
そして次こそシリーズ最後の投稿になるでしょう・・・
そろそろ違うネタでもアップしたいとも思っているので。。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。