現在私は病院で勤務しています。以前は調剤薬局で勤務していたこともあります。
前回に続き、医療現場の側面に興味がある方や、病院で勤務してみたいと思う薬剤師さんに参考になればいいと思い、一般的に行われている院内の薬剤師業務の内容をご紹介します。
今回は病棟業務編です。
別名【投薬前業務】とでも言うでしょうか。
それではいきましょう。
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もくじ
病棟薬剤業務
病棟ではベットサイドの服薬指導の他にも様々な業務を行っています。
病棟薬剤業務では主に患者さんの投薬前の段階に関わっていきます。
それに対し服薬指導は投薬後に関わることになります。
地域包括病棟など一部の病棟を除いて、服薬指導は薬剤管理指導料(報酬請求)として患者さんに情報を提供することで病院の収益につながります。
病棟薬剤業務も2012年から一部の病棟を除き、加算(病棟薬剤師業務実施加算)の対象となりました。
病棟薬剤業務は服薬指導に追加して、〈新たに必要とされる業務〉だよ
薬剤師のニーズが徐々に増えてきいる傾向だね
今回アップする内容は、日本薬剤師会『薬剤師の病棟業務の進め方』を参考にしています。
患者背景・状態の確認
入院してきた患者さんの病歴、副作用歴など確認します。
副作用歴に該当(または類似)する薬や、病態に悪く影響する薬が投与されないよう、患者さんの状態を入院時に確認しておきます。
カルテ情報の他にも、可能な限り患者さんやご家族に聞き取りを行います。
初回面談って感じかな
持参薬確認
持参薬とは入院する前に服用していた薬で、主に常用薬のことです。
先ほどの〈患者状態の確認〉で、持参薬もあれば一緒に確認します。
持参薬が無い患者さんもいれば、痛み止めなど頓用薬だけの患者さんもいます。
10種類以上飲んでいると確認が大変・・
患者さんによって管理状況が異なるので、きちんと服用できている人もいれば、怪しい人もいます。
20種類近く飲んでいる場合、「本当にこの薬が必要か?」と疑います。
そして自分が服用する立場だったら、これだけの種類を管理・服用していくことに脱落するでしょう・・・
ポリファーマシーも最近の話題ですね
この持参薬を入院中も継続するかどうか医師に確認して、それに応じて薬剤部内で調製します。
DI
DIとは、Drug Information(医薬品情報)の略称で、副作用や流通状況など様々な薬に関する情報を集約して、現場スタッフに情報提供をしていく業務です。
薬剤部内だけ〈ことが済む〉時もあれば、医師や看護師にも情報提供が必要な場合もあります。
主なDI内容としては以下の情報です。
- 副作用情報の追加、変更
- 効能、用法の追加、変更
- 相互作用の追加、変更
- 販売中止、回収品など流通状況に関して
- 新薬、新規ジェネリックなどの発売情報
- 文献、医薬誌などの有用性のある情報
例えば、
副作用情報なら医師に伝えて、処方する際の注意喚起をしてもらいます。
看護師にも必要に応じて伝えます。
全部伝えると情報量が多くて把握できないから、ある程度の選別が必要かなと。
特にここ最近は、薬の流通に関することが多いです。
「販売中止になった」、「供給が滞っている」、「薬に不純物が見つかり、メーカーが回収する」
これらのことがあれば、状況により他の薬剤に変更してもらうよう医師に伝える必要があります。
市場にないものは用意できないので
去年はセファメジンの供給停止により、抗生剤全体的に購入制限があったので大変でした。
相互作用
入院患者さんに新規処方薬が出た場合、薬が投与される前に他薬との相互作用がないか確認します。
注射同士、内服同士はチェックしやすいですが、内服と注射(または外用)など剤形が異なる場合は見落とさないよう要注意です。
相互作用は投与前の確認も大事ですが、投与後にも問題になっていないか、その後の状態も確認していきます。
相互作用は【禁忌】という併用不可の場合と、【注意】という経過観察の場合があります。
相互作用の多くが【注意】なので、その場合投与するケースが多いね。
【併用注意】の場合は併用することが多いので、むしろその後の経過観察が重要です。
そこで何かしら影響があれば相互作用を疑い、薬の変更が必要かなど医師に確認します。
カンファレンス、回診参加
医師や看護師など多職種との関わり合いから、より治療に参加していきます。
カンファレンス
カンファレンスとは医師や看護師を始め各職種が集り、各患者さんの病態や治療内容などの【患者状況】について話し合い、今後の治療方針についてお互いに再認識していきます。
医療機関にもよりますが、週1回を目安に行われるのが通常でしょうか。
患者数にもよりますが、カンファレンスに1時間以上必要となると毎日行うのは難しいです。
カルテ内で情報共有はできますが、やはりお互いの顔を見て話し合うことで見えるものがあります。
文面だけではよくわからないことも多いしね
薬剤師もカンファレンスに参加をして、使用している薬の確認や処方の変更提案などをします。
質問されることも多々あるよ
また、患者さんによっては治療は特にしていなくても、施設の受け入れなど社会的要因が関係する場合もあり、退院に向けて多職種の意見を取り入れて方針を決めていきます。
特に昨今では医療費抑制から入院期間の短縮が求められているので、よりベターな治療でスピーディーに退院できるよう、各職種の意見が必要となります。
回診同行
医師の回診にも同行して患者さんの状態を一緒に診ることも、治療に関わる上で重要な感覚を養います。
医療機関によっては業務上、薬剤師が回診同行できない施設もあります。
カルテやカンファレンスでも状態を確認できますが、回診で毎日患者さんの表情などを確認することで、状態変化が掴みやすくなります。
患者さんは〈カルテにはいない〉ってやつだね
処方提案
薬剤師から処方提案することも重要な病棟業務です。
患者さんの主訴や検査データなどから、適切な薬物治療を提案していきます。
先ほどのカンファレンス内でも行われますが、週1回のタイミングを待っていると実行されるまで日がかかるので、その都度必要なことを提案していきます。
この提案というのは必ずしも薬を【追加】するだけではなく、【減らす】ことも重要な提案になります。
状態変化があると皆そこに当然注目するので、気がつかないことはないでしょう。必要あれば薬が追加されます。
ですが、状態変化が改善された場合、追加された薬に対し周りの意識が薄れていきます。
異常時の方が【何かする】必要があるから〈意識〉が違うね。
つまり状態改善された後、追加になった薬がいつまでも投与されているケースがあります。
もちろんその後も長期的に必要ならば問題ないことですが、全部がそうとは限らないので、【終了】の確認をして薬を切っていくことも大事です。
不要な薬は皆飲みたくないし
この【不要薬の提案】は薬剤師が他職種より一番に気付ける、気付く必要がある観察ポイントです。
特にポリファーマシーと呼ばれるたくさんの薬を飲んでいる患者さんに、薬の必要性を検証して、削減していくのがここ最近のトピックです。
ただ、医師からすると自分が処方していない薬については、背景がわからず止めれないこともあるので、判断に困ることは仕方ないかと思われますが。
ポリファーマシーは複数の医療機関受診と相関するので
可能な限りの薬の削減を心掛けて、薬剤師は提案しています。
薬が多いと医療費圧迫にもつながるので
以上で病棟薬剤業務編のメインになります。
次回は今回の病棟業務に付随する内容ですが、長くなりましたので今回はこのあたりで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。