現在私は病院で勤務しています。以前は調剤薬局で勤務していたこともあります。
前回に続き、医療現場の側面に興味がある方や、病院で勤務してみたいと思う薬剤師さんに参考になればいいと思い、一般的に行われている院内の薬剤師業務の内容をご紹介します。
今回は服薬指導編です。
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もくじ
服薬指導
ベットサイドでの指導
入院患者さん(または家族)に入院中使用している薬剤に関して、各ベットに行って説明を行います。
内服、注射など現在使用中(+その前後)の治療薬に関して説明します。
基本的には主治医から投薬の説明がありますが、なかなか細部まで時間を割くのが難しい場合もあるので、薬剤師の方からも説明します。
治療内容がわからないと不安になるよね
入院患者さん全員に行うことが望ましいのですが、医療機関の形態やその中の薬剤部の人員体制によって、可能な範囲で行われています。
外来患者さんへの指導
院内で外来調剤を行っている医療機関では、外来患者さんへ投薬・説明を行います。
院外処方箋で対応している医療機関においても、一部の外来患者さんに説明することもあります。
院外処方箋の場合、院外薬局で説明されるから、院内薬剤師はほとんど関わらないよ。
特に化学療法(抗がん治療)、糖尿病治療、吸入薬、自己注射薬などに関わっていく傾向があります。
これらは看護師が担う場合もあるので、施設によって様々です。
ただ、抗がん剤は看護師でも難しい分野のため、最近では化学療法の薬剤師ニーズが高いです。
患者さんへの治療内容・スケジュールの説明を始めとして、副作用などモニタリングしていきます。
これらは医師からの説明と重複する部分もありますが、患者さんが医師に聞き忘れたことや聞きにくいことを解決できる場合があります。
先生は忙しいから、ゆっくり話しにくいのかな。
院内薬局と院外薬局の指導の違い
院外薬局と院外薬局の薬剤師が指導をする上で《違い》があります。
それは指導内容ではなく〈指導を行う背景〉が異なります。
以下が主な【院内指導】の特徴です。
- 入院患者さんの待ち時間は(あまり)気にしない
- 医師の処方意図を確認できる
- 患者さんとの距離を縮めやすい(以前の院外薬局に比べて)
- 入院患者さんは指導できない場合も・・・
※ここでの指導関係は、〈院内薬局ー入院患者〉〈院外薬局ー外来患者〉に対しての設定。
これらの背景が異なることから、総評して【院内の方が説明しやすい】と経験上感じます。
以下解説していきます。
患者さんの待ち時間
説明を受ける際に、それまでの患者さんの【待ち時間】による影響はかなり大きいです。
待ち時間:外来≫入院
外来患者さんは医療機関では診察~お会計で待ち、院外薬局に来る頃には薬を早くもらって帰りたいと思う人が多いです。
なのでそこからの説明は、相手の様子を伺いながらスピードが必要とされます。
待ち時間を考慮しつつ丁寧な説明って難しいよね
それに比べ入院中の患者さんは《ベットにいる》ため、時間をかけて説明ができます。
入院患者さんの場合、薬剤師のタイミングで指導に向かうため、患者さんが「○○時に説明があるのでベットで待ってください」となることは考えにくいです。
場合によっては、時間指定して看護師➡患者さんにアポイントしてもらいますが。
よって入院患者さんの服薬指導に関しては基本【待ち時間なし】です。
「ベットにいる時間に行く」って出向く感じだね。
逆に患者さんが検査などでベットにいない時は、〈我々の方が待つ〉ことがあります。
患者さんは待ち時間を気にしなくて済めば、話を聞いてくれる余裕があるため、薬剤師側も説明しやすい状況になります。
処方意図の確認
院内薬局はカルテ内容を確認できるので、【処方意図(何の治療に使われている)】かがわかります。
院外薬局では処方箋だけの情報から病態を推測して、患者さんとの話で処方意図を確認していきます。
たまに「探っていく感じ」の説明になるよ
それに対し院内薬剤師は、カルテを見たり、看護師に状態を確認できたり、処方医師にも確認できるという情報量の大きな違いがあります。
なので院外薬局では処方箋、患者情報だけで処方意図がわからない場合が時々あります。
「薬のことなのに薬剤師がわからないの?」って思うかもしれませんが、そういう状況は相応にしてあります。
例えば、A薬が不整脈と高血圧に適応があった場合、どちらの病態に対して使われているか薬だけでは判断がつきません。
こういう場合、併用薬や患者さんから状態を聞いて推測していきます。
新人のうちはよくわからないことが多いですが、この【病態推測】に関しては経験によって磨かれていきます。
特に医師と話すと推測力がアップしていくよ
特にステロイドは効能が多数あるので、その他の情報がないと何に使っているかわかりません。
院内薬剤師も個人差はあるにせよ、基本スキルは院外と比べ特別なものをもっているわけではないのですが、〈カルテを見れる〉、〈医師に直接聞ける〉ことができるので、患者さんの状態を確認できます。
なので、患者さんの状態がよりわかる方が説明する際の説得力も変わってきます。
能力差ではなく情報量の差ですね
また院内で勤めていると、医師や看護師と話す機会が多くあるので、病態を始め治療に対し全体的な話を聞くことができ、薬以外の情報も入ってきます。
私的にはこの感性は治療に関わる者として、院内・院外薬剤師に共通して必要だと感じています。
薬は治療全体の一部ってことだね
患者さんとの距離を縮めやすい
これは〈長期入院、繰り返し入院の場合に対して〉その傾向が出てくるということです。
医療機関によって異なりますが、私が経験上感じたことです。
通常の院外業務では薬剤師はローテーションみたいな感じで、ランダムに患者対応をします。
同じ患者さんに接することもありますが、薬局の規模に応じてその頻度は異なります。
院内でもランダムはありますが、病棟フロアに分けて患者対応することもあるため、同じ患者さんに接する機会が院外に比べ多いと感じます。
ただ、今は【かかりつけ薬剤師】が制度上ありますので、院外薬局でも同じ患者さんに毎回接することができます。
同じ患者さんに接することによって、《当たり障りない説明》だけで終わることがそれほどないです。
患者さんの病態を始め、家族状況、仕事などいろいろな背景がわかると、指導をする上でもよりその人に応じた内容で説明できると感じます。
やはり毎回患者さんに対して説明する人が変わると、介入できる限界があるのと説明が若干異なるケースも出てきます。
同じ人と接してくと、お互いの距離感も縮まるね
ただ、この「かかりつけ」を全患者さんにすると、業務上効率が悪くなることがあるので、一定以上は難しいと考えられます。
そこまで求められない場合もあるしね
また院内の場合、患者さんと接するのは入院期間に比例するので、一般的に院外薬局の方が患者さん全体的には接する機会は多くなります。
基本週1回接すると、2週間の入院でも2回だけなので、接することが多くなるケースとしては、長期入院と繰り返し入院する場合でしょうか。
特に抗がん治療で月1回など定期的に入院したり、がん終末期は入退院を繰り返す状況になったりすると接する機会が多くなります。
患者さんにとっていれば《いいこと》ではないんだけど
入院患者さんは指導できない場合も・・・
患者さんは皆さんが理解力があるとは限りません。
病態や高齢などの要因から、お話しできないことも相応にしてあります。
院外の場合、理解力がある方以外にも、理解が難しい患者さん、またはご家族(付き添い)が来局されてお薬の説明をします。
まったくお話しができない、理解が難しいといった患者さんが一人で来院・来局するケースはほぼないと思われます。
交通機関を考えると、自己判断が難しい人が一人で来ることはないでしょう。
介護タクシーとかあるけど、多くは付き添い者がいるかな
よってそういう患者さんの場合でも、院外の場合、薬の説明の際には本人または付き添いの方に【ある程度の説明ができる状況】下にあると考えられます。
薬を渡すだけで終わることもあるけどね
入院患者さんの場合、まったくお話ができない場合もあります。
ご家族などが時々来られるケースもあり、その際に服薬指導をすることもありますが、入退院時だけの来院だと説明しても理解が得られない事態も出てきます。
そういう場合は指導自体できないこともありますが、それでも投薬されている内容を確認して、必要に応じ医師に薬剤提案などしていきます。
直接的な指導はできなくても、検査値など客観的なデータから介入していきます。
また、退院後の状況に、「昼しか介助者がいない」とわかれば、入院中の投薬内容を【昼だけ】に設計して、退院後の服用にも不都合がない状況にするのも重要な働きかけです。
入院は一時的だから退院後を見通すのが大事だね
長くなりましたが、このあたりで院内の服薬指導編を終わりにします。
ここには全部書ききれませんが、多くの内容を盛り込みました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
まだまだ他にも業務がありますので、今後もまた投稿します!