現在私は病院で勤務しています。以前は調剤薬局で勤務していたこともあります。
前回に続き、医療現場の側面に興味がある方や、病院で勤務してみたいと思う薬剤師さんに参考になればいいと思い、一般的に行われている院内の薬剤師業務の内容をご紹介します。
今回は多職種連携編です。
別名、【対人業務】というものでしょうか。
多職種連携の業務は前回の病棟薬剤業務に含まれる内容のものもあり、病棟業務の一環として捉えられるものもあります。
いろいろな職種と関わっていきますが、基本的には人と関わっていく以上、お互いが分かり合えるような話し合いができるコミュニケーションが大事です。
それではいきましょう。
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もくじ
看護師とのコミュニケーション
薬剤師が病院内で一番関わる他の職種は、看護師さんです。
看護師は病棟、外来、手術室などに配属されて各部門の業務を行うため、それぞれの部門の看護師と接することがあります。
メインに関わるのは【病棟】かな
看護師は情報網
看護師は医師とのやり取りも多く、患者さんに直に関わっていくため、たくさんの情報を持っています。
医師以外にも、薬剤師、理学療法士、検査部門(臨床検査、放射線科)、ソーシャルワーカーなど複数の職種と関わるため、他職種より情報量が多くなります。
看護師と関わらない部署はないかな
なので医師と話す時間がないと、看護師に患者さんの経過などに関して聞くことは多々あります。
普段からコミュニケーションをとることが大事で、お互いの距離感を縮めることでいろいろ円滑にいくことがあります。
普段から話していると、何気ないことも聞きやすいしね
インシデント、アクシデント
インシデント、アクシデントは全部署に起こり得ることです。
中でも看護部は様々な業務に関わるため、インシデント件数も多くなります。
看護部で薬に関するインシデントが起きた場合、内容によっては薬剤部でも自分たちの業務を見直して同じミスが出ないよう、協議することもあります。
普段からお互いの業務状況がわかると、こういう事態でもより無理のない解決策を考えやすくなります。
他部署との協力もミスを減らす要因になるね
医師との関わり
医師との関わりも結構あります。
主に処方全般的に関わっていきます。
医師と関わっていくことで治療に対してたくさん教えてもらうことがあります。
基本的に医師からの指示を受ける側ですが、【処方代行入力】といって、薬剤師が医師の了承のもとオーダー入力をして医師の業務負担を軽減する業務もあります。
口頭指示受け後の処方修正や、定期処方の継続はよくある代行入力だよ。
医師➜薬剤師へ
医師から処方追加、中止、変更のオーダー依頼を受けるのは日常的なことです。
(看護師から連絡を受けることもありますが、元は医師からの指示です。)
オーダー以外にも、普段使い慣れていない薬に関しては、「これって何の薬?」と聞かれることがあります。
また、「この薬(院内にないけど)使いたいんだけど」と依頼を受けることがあり、採用・購入に当たりいろいろ検討します。➜薬事委員会などで協議
こういう新規購入時は在庫管理の問題があるため、医師が使いたい薬剤に対し、ある程度薬剤師側の意見も考慮してもらえるような関係づくりが望ましいのです。
コミュニケーションがよくとれていると、いろいろ提案しやすいよ。
他には、「〇〇の場合、どんな薬使うのがいいか?」など聞かれることもあり、適切な提案が求められます。
この手の質問が多くなってくると、それなりに【信頼してもらっている】ため、うれしいことです。
薬剤師➜医師へ
薬剤師からも医師に提案することもあります。
患者さんの状態に応じて、処方提案、処方削除を提案していきます。
薬剤師からの依頼に関しては、すべて聞き入れてくれるわけではないので、それなりの説得力がある提案が必要になります。
整腸剤の調整など簡単なものは問題ないですが、薬剤師では変更が妥当かの判断が難しいケースが多いので、可能な範囲で提案していきます。
変更した後の状態変化は医師が対応するから、変更依頼は受け難いよね。
私が常々思うことは、薬の変更・中止など依頼して何か患者さんに変化があった場合、患者さんへの影響と自分たちで元に戻せないため医師の負担が増えてしまいます。
➜状態変化時は医師に連絡がいき、また指示出しをするため《手を煩わせてしまう》ことになるため。
①患者さんに悪い影響が出ないこと
②①を踏まえての【手間】ですね
これは仕方ないことではありますが、この【患者への影響】と【医師の手間】に対して許容できるかが提案を受け入れてもらえるかになるので、きちんと分別して提案していきます。
提案しにくいこともありますが、不必要な薬が投与されないように診ていくことも薬剤師の重要な業務です。
提案しやすい関係性になるよう、普段からコミュニケーションとるのが大事だね!
その他の職種
看護師、医師がメインに関わっていきますが、その他の職種とも関わりがあります。
検査部門
検査部門は臨床検査科と放射線科があります。
臨床検査科は、細菌培養➜抗菌剤、血糖測定器関連➜SMBG(自己血糖測定)指導などで関ることがあります。
その他、輸血や血液製剤は双方が関わりますが、医療機関によって担当部門が分別されることもあります。
放射線科は、造影剤、放射性医薬品関連の薬剤にて関わりがあります。
造影剤は放射線科に一任している医療機関もあるので、在庫管理や発注などお互いに業務を分担します。
ソーシャルワーカー
ソーシャルワーカー(MSW)とは、社会福祉士や精神保健福祉士といった資格を持って勤務している方が多くいます。
ソーシャルワーカーの仕事は詳しくはわからないのですが、主に地域連携室にて地域医療の各施設との連携や福祉の相談を受けています。
院内薬剤師と関わりとしては、入院患者さんが退院先の施設に行く際に薬剤的に問題ないか相談を受けることがあります。
例えば、
- 看護師が常駐していない施設だとインスリンを打てないので、入院中インスリン➜経口血糖薬に変更する必要がある。
- 老健施設では高い薬剤を負担していけないため、できるだけ患者さんに安い薬剤で済ませてほしい。
などで相談を受けることがあります。
もちろんこれらはMSW➜医師に直接依頼する場合もありますが、薬剤師から提案する場合もあります。
訪問看護師
訪問看護部は院内の看護部とは別に独立している施設があります。(建物上は同じ中にいても)
訪問看護師やケアマネージャーは在宅医療をしていく上で必要不可欠な職種です。
在宅医療に関して薬剤師の関わりは、【院外薬局】が担っている施設が多いです。
外来患者さんを院外処方にしていれば、訪問診療(在宅医療)も基本は院外処方箋になるからね。
中には【院内薬局】が訪問に行く医療機関もあります。
院内薬局が訪問していれば当然関わり合いがありますが、院外処方箋でも院内薬剤師は訪問看護師との関わることがあります。
同じ施設内にいれば結構関わるね
訪問看護に関しての薬関連の業務を一部担ったり、在宅患者さんの薬物治療の相談を受けることがあります。
在宅患者さんは活動性が低く、栄養状態も良くないことが多いため、使える薬剤も他の外来患者さんとは同じにできないことが多々あります。
それらを考慮してうまく提案できることが重要です。
以上で多職種連携編になります。
繰り返しですが、基本的には人と関わる以上、お互いが分かり合えるような話し合いができるコミュニケーションを日ごろからとっていくことが大事です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。