シロスタゾールの認知症への効果

シロスタゾールは抗血小板薬として脳梗塞治療薬などに使用されますが、認知症に有効性があると言われています。

中でも、MCI(軽度認知障害)に対しての有効性を耳にします。

今回はシロスタゾールの認知症への効果について調べてみました。

有効性の文献

2004年~2009年で台湾においてシロスタゾールの認知症に対する有効性を検証した文献があります。

『シロスタゾール使用は認知症リスクの低下と関連する全国的コホート研究

この文献の見解では、

「シロスタゾールの使用が認知症を発症するリスクを減らす可能性があり、高い累積投与量が認知症のリスクをさらに減らすことを示唆しています。これらの所見は、ランダム化臨床試験でさらに検討する必要があります。」

とあります。

認知症のリスクを減らす可能性はありそうかな・・・

まだこれだけでは何とも言えなさそうですね。

治験

実際に有用性を確認するために治験(臨床試験)が行われました。

2015年5、6月に治験がスタートしています。

<以下概要>

対象者:MCI(軽度認知障害)

用法用量:シロスタゾール50mg錠1回1錠 1日2回経口投与

投与期間:96週継続

評価:MMSEスコア(認知機能テスト)

➜『治験内容詳細

この治験に至るまでに「シロスタゾールの有益性がわかっていた」ので、立証する目的だったんだね。

ちなみに現在2021年2月時点において、シロスタゾールの認知症の適応はまだとれていません。

ですが、MCIに対して有効とする臨床報告を耳にして、実際に使用する医師もいます。

作用機序は?

ではシロスタゾールのどういう作用機序から認知症に有効なのでしょうか?

抗血小板作用(血液サラサラ)だけでは説明が難しいようです。

動物実験の結果,シロスタゾールは血管の壁に沈着するアミロイドβという老廃物の排泄を「血管周囲ドレナージ経路」 に沿って促進することが明らかになりました。
したがって,シロスタゾールは抗血小板薬として脳梗塞を予防することに加え,血管に直接作用して老廃物の排泄を促進することで,認知症の進行をくいとめることが期待されています。

日本医事新報社「認知症に対するシロスタゾールの効果はどう期待できますか?」 より引用

脳血管に沈着する老廃物(アミロイドβ)を、脳血管を通じて「脳外に排出する」ってことだね。

(→引用元サイトでは図解あり)

このように認知症では脳内に老廃物アミロイドβが蓄積されることが知られていますが、シロスタゾールはアミロイドβの蓄積を脳外に流し去る作用を有することが、認知症に対する効果と考えられています。

副作用は・・・

シロスタゾールの副作用は頭痛、動悸、頻脈、出血など主にあります。

これは脳血管拡張による頭痛や、心臓にも影響が出るため心拍数が上がることによります。

自覚症状などで発覚することが多く、その場合中止になります。

(脳出血など自分ではわからないこともありますが)

MCIには通常用の半分の用量なので、副作用も少ない傾向にはなるかな。

脳梗塞治療など通常用量ではシロスタゾールは1回100mg、1日2回で使用します。

中には上記の用量で副作用が出たり、他に抗凝固薬を併用している場合は出血リスクを考慮して半量の1回50㎎、1日2回で投与することもあります。

MCIへの臨床用量は治験の用量と同じく1回50㎎、1日2回で投与されます。

全例に有効ではない

認知症、中でもMCIに有効とされているシロスタゾールですが、まだ適応外ということで一般的に推奨されている薬ではないです。

また、認知症に対する有効性というのは、「進行抑制」という意味での有効性が大きいため、判定が難しくもあります。

「シロスタゾールを投与したらよくなる」ということは断定できないですが、一つの治療手段という位置づけになり得るのではないでしょうか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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