以前、注射剤の業務についていろいろ書きましたが、補足的な内容を追加しました。
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もくじ
注射剤といえば
注射剤と言えば、アンプル製剤やバイアル製剤が思い浮かぶでしょう。
アンプルは落とすと割れるから要注意
また、糖分などの栄養が入った輸液も注射剤の一つです。
嚥下ができない患者さんには〈命の水〉だよ
自己注射(患者自身が投与)や輸液など一部の注射剤は院外薬局でも扱いますが、院内で扱う注射剤の方が圧倒的に種類が多いです。
学生の頃は注射剤のことも学びますが、やはり実物を目にすることでことは得る知識はたくさんあります。
これに関しては院内薬剤師の方が知識人ということを言いたいのではなく、触れる機会がモノをいうので、院外薬局の薬剤師でも院内で働けば誰でも知識を得ます。
注射のイメージができると看護師さんとの話で理解しやすいこともあるよ
もちろん考えさせられることも現場では多々ありますが、その積み重ねでトラブルに対応していけるようになります。
何事もトラブルシューティングの積み重ねで成長するね
注射剤のメリット、デメリット
メリット
まずは注射剤のメリットとして、
- 即効性がある
- 効果が強い(確実)
- 飲めない患者さんに使える
やはり効果の面から、急性期では注射剤を優先して治療することが多いです。
ある程度患者さんの状態が落ち着いたら、《注射⇨内服》に切り替えて退院に向けていきます。
内服でも注射と同等の効果が得られる薬もありますが、患者さんの状態が良くない時は【より確実な投与法】を選択します。
両者の〈効果の差〉について理屈付けすると、
薬が投与されて排泄される過程を薬物動態と呼び、以下の経路を辿ります。
投与➡(A)吸収➡(D)分布➡(M)代謝➡(E)排泄
ADMEってやつだね
内服と一部の外用剤は、吸収(+初回代謝)という過程があります。
注射は投与➡分布の経路をたどり、吸収過程がないためダイレクトに薬剤が臓器などの組織に移行します。
多くの薬が吸収(+初回代謝)に影響を受け、分布までにロスが発生します。
なので、この両者の経路の差が効果の差につながります。
デメリット
また注射剤のデメリットとしては、
- 医療機関での投薬になる(自己注を除く)
- 他の剤形より高価(同一銘柄の比較)
- 他の剤形より医療事故のリスクがある
注射剤しかない薬の場合、治療が必要になれば通院の負担が増えます。
例えば月1回の製剤なら毎月1回は通院必要ですが、内服で対応できれば2、3か月に1回の通院で済むケースもあります。
また価格においては同じ薬剤(同一銘柄)の内服と注射の場合、注射剤の方が高いです。
医療事故に関しては、もし投与すべき患者さんとは別の患者さんに誤って投与した場合、注射と内服を比べたら注射の方が有害事象になる可能性が高いです。
注射剤は看護師の投与前確認作業と混注する場合もあれば、内服より投与までに時間を要します。
内服も投与前確認はあるよ
さらに投与後も流量のチェックなど想定すると、内服の方が看護師の負担が少ないです。
これらはスタッフがしっかりすればいいという見方もありますが、作業負担の大きさとミスは相関するため、医療事故の観点にもつながります。
もちろん内服でもハイリスクな薬もあるので、一概には言えませんが、
一般的には注射剤の方が効力の強さ・業務面からハイリスクになるため、誤投与のリスクは他剤形より大きいと考えられます。
輸液シリーズ
一般的な輸液(糖液、外液など)
輸液は糖分、電解質、アミノ酸などを配合した注射剤で、主に水分や栄養摂取を目的に投与されます。
絶食下や脱水の患者さんには【命の水】です。
「点滴すると楽になる~」という方は時々いますが、輸液には特別な効果はないです。(適切な輸液補正という意味では各病態に重要ではありますが)
医療者は輸液のことをよく「水」って言うよ
一般的に呼ばれる輸液として以下のものがあります。
- 糖液+電解質液(1~4号液)
- 5%糖液(時に10%)
- 乳酸リンゲル液(細胞外液)
- 生食
3号液、外液は頻用されるよ
これらは患者さんの状態に応じて使い分けされます。
アミノ酸輸液
アミノ酸はタンパク質の源になる重要な栄養素で、絶食下や食事摂取不良になると一般輸液に続いて使用されます。
アミノ酸輸液は以下のものがあります。
- アミノ酸単独
- アミノ酸+糖液+電解質
- 肝不全用アミノ酸
- 腎不全用アミノ酸
「+糖液」は頻用されるよ
これらは患者さんの状態に応じて使い分けされます。
脂肪乳剤
脂質に関しては脂肪乳剤と呼ばれる製剤がありますが、一般的な輸液と比較して使用頻度は少ないです。
脂肪乳剤は絶食で2週間くらい経過すれば検討されるかな
脂質は重要な栄養素ということで、更に使用促進できるように研究された施設もあるようです。➡脂肪乳剤に関する文献
高カロリー輸液(TPN)
長期にわたって絶食下になると、通常の輸液やアミノ酸では栄養不足になるため、高カロリー輸液と呼ばれる製剤が投与されます。
高カロリー輸液は糖質やアミノ酸量が多く配合されており、中にはビタミン、微量元素も配合されている製剤もあります。
種類もいくつかありますが、、、
輸液について書きすぎたのでこのあたりで。
と言うことで、どこかでまた詳しくやります。
注射剤が多彩な分野
薬は注射の他、内服と外用に大きく分類されますが、中でも注射剤の方が他剤に比べて多彩(得意)な治療分野があります。
一般的には急性期では効力・確実性の観点から注射剤が優先して使用されますが、ここではそれ以外について挙げてみます。
抗生剤
ご存じのように細菌感染症に使われる薬です。
一般的に内科・外科での使用が多いですが、全ての診療科で扱われます。
抗生剤の種類は圧倒的に注射の方が多いです。
(点眼薬など局所感染症を除いて、全身に及ぶ感染症に対して。)
正確には【使える種類が多い】という意味で
〈使えない〉というと語弊がありますが、注射剤の方が多様性があり、選択肢が多くなり、治療の幅が増えるため優先的に使用されます。
抗がん剤
抗がん剤治療のレジメン(治療内容)には、多くの注射剤の抗がん剤が入っています。
注射剤が抗がん剤治療のメインではあるものの、この10年くらいで内服による抗がん剤が進出してきて、徐々に変わりつつあります。
特に【分子標的薬剤】と呼ばれる、より病巣にターゲットを向けて副作用を少なくした内服製剤が開発されていますので、今後も更なる新薬に期待がかかります。
分子標的薬剤は注射、内服両方あるよ
また昨今では全体的に入院➡外来治療にシフトしていることから、より内服製剤の進展が見られるでしょう。
点滴が必要無くなれば入院しなくて済むことが増えるね
とは言え、まだまだ注射剤による治療は重要なポジションです。
抗リウマチ薬
リウマチは自己免疫疾患の一つで、免疫異常からなる疾患です。
この免疫異常にターゲットを当てた【生物学的製剤】と呼ばれる薬剤が、リウマチ治療ではトピックスになります。
この生物学的製剤は注射剤で、多数種類があります。全般的に高額な薬です。
自己注タイプもあるので、通院負担が少ないケースもあるよ
中にはこの製剤の適応が難しい患者さんや副作用が出た場合、内服など他剤での治療になる場合もあるため、全患者さんに適応されるわけではないのですが。
内服もそれなりにバリエーションがあるので
強力な鎮静剤
鎮静剤全体の種類では内服の方が多いですが、【強力な鎮静剤】となるとやはり注射剤の方に軍配が上がります。
不穏が強く内服で無効の場合や、どうしても寝かせたい場合などは注射剤を使用します。
ただ、内服鎮静剤は種類が多く、精神疾患のコントロールには患者さんの特徴に応じて使い分けの選択肢が増えます。
また、終末期やICUなどの集中治療室での鎮静には、持続的な作用が必要な場合が多いため注射用鎮静剤は欠かせません。
内服できない状態が多いので
仮に経管投与で経鼻的に内服投与が可能だとしても、効果が切れる時間帯が生じるため、完全な鎮静が必要な場合は注射剤の適応になります。
麻酔剤
麻酔に関しては、ほとんどが注射剤になります。
吸入麻酔や、局所麻酔薬で胃内視鏡時に経口摂取する薬、点眼薬、塗布剤もありますが、これらは全体の麻酔薬の中の一部です。
キシロカインは剤形豊富だよ
ちなみに鎮痛剤に関しては、注射剤は内服・外用に比べて少ないです。
痛み止めの注射をする時は【局所麻酔剤】が混合されている場合が多いかな
以上、注射剤のいろいろな特徴を書いてみました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。