2020年にコロナウイルスが猛威を振るい、2021年はコロナワクチンが承認されて各医療機関や集団接種会場にてワクチンが接種されています。
そんな中、私も薬剤師としてコロナワクチンの集団接種ヘルプに行ってきました。
ちなみにワクチンの特性に関してはいろいろ調べれば検索されますので、ここでは保管管理や調製時の注意点など現場での出来事として感じたことをレビューしていきます。
(自治体によって保管や調製方法が多少異なることがあるかもしれません。)
もくじ
コミナティ(ファイザー)が最初に出回った
コロナワクチンの種類がいろいろあることは周知されていますが、私が最初に最初に手にしたのはファイザー製コロナワクチン「コミナティ」でした。
コミナティの調製~接種~調製後の注意点としては、
- 調製前の管理
- 1バイアルの接種人数
- 筋注にて接種
- 2回接種で完了、2回目は3週間後(2021年6月時点)
- 調製後の温度管理、遮光保存
これらに関して解説していきます。
薬剤師の配置は2~3人
私のエリアでは2~3人の薬剤師が配置され、ワクチン管理と調製に関してダブルチェックで行っていました。
エリアによってはもっと多く配置するところもあるのかもしれませんが。
また、1人で行っているところもあるかもしれませんが、その場合は念入りな確認作業が必要です。
ちなみに医師は1~2名、看護師は4~6人くらいだったと思います。
コミナティは冷凍保存されている
コミナティは通常-90~-60℃のディープフリーザーで冷凍保存されています。
この冷凍保存された状態から接種当日に集団接種会場にある5℃前後のフリーザー(冷蔵庫)に移して、室温に戻してから調製していきます。(2~8℃の範囲内)
なので調製する時には液体になっています。
ディープフリーザーではワクチンに記載されている使用期限(入荷後半年くらい)まで使用できますが、通常のフリーザーに移すと30日以内に使用しないとならないのです。
そもそも何でディープフリーザーからフリーザー(冷蔵庫)に移す必要があるかというと、ディープフリーザーは通常より高額で各集団会場に設置できないからです。
通常のフリーザーに関しては2~8℃に温度管理できていれば専用のものでなくても問題ないので、多くの会場に設置できます。
なので流れとしては、
1.市役所や基幹病院など各自治体の中核となる場所にディープフリーザーが設置され、そこにたくさんのワクチンが保管されている。
2.接種当日にディープフリーザーに保管されているワクチンが、運送会社によって当日の接種会場に必要数運ばれてくる。
3.薬剤師が運ばれてきたワクチンの数とロットNo.を確認してフリーザーに移す。
という感じになります。
集団接種に限らず医療機関で接種する場合においてもディープフリーザーが無い施設は、このように近隣のワクチン保管施設から運送会社によって運ばれてきます。
ディープリーザーがない医療機関の方が多いですね
また、解凍後の再冷凍しての使用は不可なので、冷蔵庫に移してからは廃棄しないように使い切る必要があります。
今でこそフリーザーで30日以内の使用ですが、当初は解凍後5日以内の使用と制限されていました。
そして接種開始になって1か月くらい経過したら、解凍後の品質保証が5日➞1か月に延長されました。
解凍後の期限が短ければ、その分廃棄ロスが削減できます。
集団接種では原則当日使用分が運送されてくるのでそこまで影響はないのですが、ディープフリーザーのない医療機関で接種する場合においては、ある程度の接種日数分をまとめて受け取るので保管の融通がきくようになりました。
解凍時間
解凍には室温で30分、冷蔵(フリーザー)で2時間かかります。
1人0.3mL、1バイアルで6人分
0.3mlが1人分の接種量です。
冷凍されているコミナティを解凍して、液体になってから生食で希釈して調製します。
そしてコミナティ1バイアルから生食で希釈して6人分採取できます。
生食1.8mlで希釈して、0.3ml採取します。
1人分0.3ml×6人=1.8ml(生食希釈量)
ただ、生食の希釈時には解凍と調製にそれなりに時間の制約があります。
解凍には室温で30分、冷蔵(フリーザー)で2時間かかる。
そして解凍後は2時間以内に生食希釈する。
いろいろ時間が細かい・・
流れとして、
1.冷凍してあるワクチンを室温で30分かけて解凍する。
2.解凍後2時間以内に生食1.8mlで希釈して、0.3mlずつ採取して6人分に分ける。
3.次に調製するまでにワクチンが解凍されているように2.の工程時にフリーザーにあるワクチンを室温に戻すなど時間配慮する。
こんなイメージになります。
実際は生食希釈を何回かに分けて行うので、ワクチンを調製している間に時間は経過していきます。
2、3回目くらいの調製までに解凍時間を気をつければ、以降はさほど時間を気にする必要はなかったです。
3回目くらいまで「希釈時には解凍されている」ように、タイミング見て室温に戻す感じですね
また、解凍後は2時間以内に生食希釈するという制約がありますが、これも当日分を何回かに分けて希釈するため、1回の希釈するバイアル数では2時間もかかることはなかったです。
最初は6人用のシリンジがなく5人用のシリンジで対応していたため、1バイアルから5人分しか採取できませんでした。
開始から1か月くらい経過して、6人用のシリンジが普及してきて、《コミナティは6人用》として定着しました。
保存期間とかシリンジによっていろいろ変遷があった
接種は筋注で
集団接種では主に看護師が接種を行います。
一般的にワクチンは皮下注での接種が多いです。
海外では筋注で行うワクチンが多いのですが、日本では多くが皮下注です。
コロナワクチンは筋注(筋肉注射)と限定されています。《2021年6月情報》
皮下と筋注の違いは、より奥に針が刺さる方が筋注です。
筋注の方が抗体価が得られやすく、副反応も少ない理由から海外ではコロナワクチン以外にも筋注が一般的です。
日本では過去に筋注による「大腿四頭筋短縮症」という副作用が問題になった背景があり、厚労省から皮下注が推奨されていた背景があり、皮下注の方が一般的になっています。
当時はワクチン以外の薬剤も筋注されていたり、ワクチンそのものの障害かは定かではないため、コロナワクチンの筋注に関しては不安はないとされています。
コロナワクチンに関しては、海外での投与例をそのまま承認されているので、投与法に関しても筋注になっています。
コミナティは2回接種で完了します。
2回目は1回目から3週間後に接種します。
(➜2021年6月時点では2回目で完了でしたが、3回目接種の可能性もあります。:2021年11月)
ですが実際は3週間後に体調がすぐれなかったり、急な予定が入ったりして接種できないこともあります。
その場合は、3週間経過したらできるだけ早い段階で接種するということになります。
「それ以上のことは言えない、わからない」っていうことですね
具体的には「2回目はいつまでに接種するか」という明確な決まりはないので、どの程度抗体価に影響するかわかりませんが、「遅れても接種しないよりはした方が良い」という解釈です。
希釈後の使用は6時間以内、保存は2~30℃で遮光
コミナティは生食で希釈してから6時間以内に使用しないと廃棄になります。
調製後に接種人数に変更があるとロスになってしまう可能性があります。
当日キャンセルが出たら、代わりの人をスタッフが探しているのが大変そうでした。。
当日キャンセルはできるだけ控えてほしい・・・
また、調製後の温度管理に関しては【2~30℃】となっています。
接種前に冷たいと接種部位の冷感で痛みを感じるので、常温に置いておきます。
なので作業デスクにも温度計と時計がおいてあります。
常に【温度と時間】を把握している感じですね
遮光に関しては、調製したワクチンシリンジに遮光袋かアルミホイルをかけて保管しておきます。
接種するのは看護師なので、1回接種ごとこの遮光袋を外して、かけてを繰り返すのが煩わしいと思われる方もいらっしゃると思いますが、可能な範囲でお願いしております。
mRNAワクチンは光分解されやすいので
最後の確認
最後は予定ワクチン接種の人数と使用したバイアルの数などが一致しているか確認します。
途中段階でも確認していきますが、最終確認という意味合いで。
実際に作業をしていくと、機械的な工程になり間違って調製してしまう可能性も0ではないという印象を受けました。
大したことではないのですが、ヒヤリ的なことも多少あります。
もちろんあってはいけないことですが、最後に「間違いがなかった」という確認をします。
以上でコミナティの管理、調製に関して実際に体験した印象も踏まえてレビューしてみました。
最初はいろいろ不安でしたが、やってみると貴重な経験だと感じます。
作業工程以外にも、会場の雰囲気や、医師の問診や看護師の接種対応など普段の医療現場ではなかなか目にすることができないこともありました。
また、コロナワクチンで新たなことがあればレビューしたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。