前回はコミナティ(コロナワクチン)の調製についてレビューしましたが、今回は実に大変な思いをしたので書き留めておこうと思いました。
参考までに前回の記事を載せておきます。
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もくじ
会場の温度が30℃を越した
なんと会場の温度が30℃を超えてしまったのです。
エアコンのない会場で、温度管理ができず外気の影響をもろに受けてしまう会場でした。
コミナティの調製や保管において重要な温度管理については、コミナティを生食に希釈後の液体は【2~30℃で保管して6時間以内に使用する】と規定されています。
つまり、30℃を超えないように管理しないといけないのです。
30℃を超えての保管はどのくらい分解されるかなどデータはありません。
とりあえず何かしら対応をして、極力30℃以内での使用をするという状況になりました。
というわけで、今回いろいろ諸問題が発生した内容を順々に書いていきます。
諸問題解決まで長かった
生食調製はエアコンのある部屋で
幸いコミナティを生食調製する時は、接種会場とは別室のエアコンがある部屋で行うことができました。
これで解決!
・・・だったらよかったのですが、まだ先々の問題がありました。
その日はコミナティ調製の部屋はフロア1階で、接種会場はフロア2階です。
通常は同じフロアで調製、接種を行うので、薬剤師が看護師がいる接種ブースに調製したコミナティの残量を確認して、足りなくなりそうな頃合いを見て追加のワクチンを看護師に届けます。
同じフロアであれば調製しつつ接種ブースの状況をみて薬剤師がコミナティの補充を行えるのですが、今回のようにフロアが分かれていると看護師に持っていくタイミングがわからないのです。
まして、接種会場の温度が30℃を超えているとなると、安易に室温に置いておくこともできないのです。
通常(室温30℃以下)は調製後のコミナティはそのまま室温においておくので問題はないのですが。
どうする・・?
冷蔵庫に入れておけばいいのでは・・?
ということで、2階フロアに置いてある冷蔵庫に調製したコミナティを入れておくことにしました。
誰がワクチン補充する?
まだ問題が続きます。
エアコンの効いた1階の部屋でコミナティを調製して、30℃を超えている2階の会場では冷蔵庫に入れておく。
さて、この2階の冷蔵庫のあるコミナティを接種ブースに届けるのは誰が行うか?という問題です。
本来は薬剤師が行うはずですが・・
本来なら薬剤師が届けるのですが、1階ではまだまだその日のコミナティの調製をしなければなりません。
1階で調製をしつつ、1階⇔2階に行ったり来たりして冷蔵庫のコミナティを接種ブースに届けるのは時間が間に合いません。
調製した分を2階に持っていくのは問題ないのですが、冷蔵庫⇔接種ブースの出し入れは頻繁にあるので、調製しながらはできない状況でした。
ということで、今回は看護師さんに冷蔵庫から接種ブースに運んでもらう役割をお願いすることになりました。
すんなり看護師さんに納得はされなかった
非常事態とは言え、看護師さんも本来やる仕事ではなかったので、すんなり納得されなかったようです。
その分、看護師さんも手間を割くのでスムーズにいかないことになると想像できます。
当日は私ではなく別のパートナーの薬剤師が交渉していただいたのですが、それなりに悶着合ったように伺えました。
普段同じ職場ならまだコミュニケーションがありますが、集団接種では医療従事者はほぼ毎回顔ぶれが違います。
薬剤師同士以外でも毎回メンツが異なることが多いので、看護師、医師とはみんな初対面のことが多いです。
仮に初対面ではなくても、通常集団接種では職種間のコミュニケーションがない状況でした。
個人的に多方面に挨拶をしている人もいますが、基本は同じ職種間だけで話している雰囲気でした。
ある程度話せる関係ならまた違ったかもしれないけど、仕方いないですね
医療従事者以外に毎回会場スタッフはいます。
今件に関してパートナーが冷蔵庫からの取り出しをスタッフに依頼したそうですが、断られたとのことです。
やはり、触ってしまうことで何かトラブルが起きたら責任もてないと。
確かにおっしゃる通りで、やはり薬剤師か看護師かどちらかが行うしかない状況でした。
とりあえず少しずつ見通せる状況になっていますが、まだこれで終わりませんでした。
直前まで冷蔵庫に入れておくと、接種時に患者さんが痛い
会場が30℃を超えているので、冷蔵庫に入れておきます。
ですが、冷たい状態では接種時に冷感による痛みを伴うので、ある程度室温に戻しておく必要があります。
ただ、30℃を超えてしまうとどのくらい品質に影響するかわからない。
《接種するまでに30℃を超えない範囲で、冷温➜室温程度に戻っている状況をつくる》
これはなかなか難易度が高い問題だ・・・
今まではコミナティの製品自体に注目した温度管理でしたが、今度は患者さん側への配慮が必要になってきます。
これに関しては看護師さんから指摘がありました。
得てして薬剤師は製品に注目しがちですが、患者さんへの配慮が薄れがちになります。
室温に戻せばいいだけなのですが、何分前に冷蔵庫から取り出せばいいのか?
ここまでくると、正直だいたいでやるしかないという心境になってきました。
ここまでいろいろやり取りがあって、これ以上複雑にするのはトラブルになりそう・・・?
この状況を聞いたのは、コミナティを調製開始して数時間くらい経過したあたりです。
ある程度その日分の調製の目途がたったので、私はパートナーに調製を任せてそれまで看護師さんに依頼していた会場の冷蔵庫から接種ブースへのコミナティの配薬をしようと2階に行きました。
パートナーがそれまでいろいろ交渉してくれたので、さすがに次は自分かなと。
得策は何もなかったけど、とりあえず状況を見に行ってみようということで。
そんな感じで30℃超えの接種会場に行きました。
まずは看護師➜薬剤師にコミナティ補充を戻す
とりあえず「薬剤師がコミナティ補充をします」ということで看護師さんに伝えました。
まずは看護師さんの負担を減らすと
で、ここからはどうするか?ですね。
これが自分の施設であれば、どこまで厳密にやるかはある程度許容せざるを得ないと思いますが、
集団接種では地域の薬剤師会の先生方がいろいろルールを決めてとりまとめていただいているので、安易な対応をすると薬剤師会の先生方にも影響が出てくると思いました。
なので、即席でしたがそれなりに考えるしかないという心境でした。
室温に戻る時間を計った
正解かどうかわかりませんが、その場にあった温度計と時計とメモを見てそれを思いつきました。
冷蔵庫が15℃くらいにやや高めに設定されていたので、そこから室温に戻して20~30分くらいで30℃まで上昇しました。
この時間を目安に逆算して、冷蔵庫➜接種ブースにコミナティを補充しました。
原始的なやり方で
ひとまずこれで場は終息しました。
あとからパートナーがきて、冷蔵庫の設定温度をもう少し上げてやりやすいように設定してくれました。
これで製品管理と痛感配慮ができました。
30℃を超えないよう完璧だったとはは言い切れませんが、その場でできるだけのことはしたかなと。
最後はほっこりした雰囲気で
看護師さんも最初大変で、調製後のコミナティを冷蔵庫に入れておくことは理解しがったのですが、短い時間でいろいろコミュケーションをとって最後はお互いの状況を理解できる状態になりました。
次は何かしらの冷房設備をとってもらおう
という感じで無事大きなもめごとなく終えました。
お互いの感情は全部書ききれませんが、最後に至るまでそれなりにお互い探り合ってコミュニケーションをとったと思います。
やはりコミュニケーションはいろいろなところで問われますね。
ということで今回は30℃超えの会場でコミナティ調製が大変だった内容でした。
とりあえず窮地に立ったら現場を見て何ができるか感じてくる
この一言でしょうか。
すごく刺激的で、薬剤師スキルだけではなくいろいろな経験が問われた1日でした。
最後に振り返りをまとめておきます。
①コミナティ調製は1階のエアコン管理の部屋でできた。
②2階の接種会場は30℃超えのため、調製後のコミナティを冷蔵庫で管理。
③冷蔵庫➜接種ブースへのコミナティ補充は看護師さんに依頼した。
④コミナティ調製が落ち着いてきたら、③を薬剤師が行った。
⑤コミナティが冷たいと患者さんが痛いので、時間を見計らって30℃超えないような範囲で室温に戻して接種してもらった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。